今日の晩ご飯のあさりご飯。この時期なら蛤が旬なのだけれど、炊き込みご飯にするならあさりかな~、と思ってあさりにした。でも考えてみたら蛤ご飯も美味しかったかも。
ご飯を美味しく食べられるのは健康な証、と常日頃私は思っている。逆に美味しく食べれなくなった時はやばい、って当然か。
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さて、今日の本は宮下奈都の「太陽のパスタ、豆のスープ」です。
内容紹介
暗闇をさまよう明日羽に、叔母のロッカさんは“リスト”を作るよう勧める。溺れる者が掴むワラのごとき、「漂流者のリスト」だという。明日羽は岸辺にたどり着けるのか?そこで、何を見つけるのか?ささやかだけれど、確かにそこでキラキラと輝いている、大切なもの。読めば世界が色づきはじめる…“宮下マジック”にハマる人続出中。
※「BOOK」データベースより
なんか、小説というより啓蒙本的な匂いがして、残念だった。ひねくれ者の私は啓蒙本が嫌いなので、ああだこうだっていう道しるべ的なものをもう少しストーリーの中にそっと盛り込んでくれれば逆に説得力が増した、というか共感出来て面白く読めたかもしれないなと思う。話の内容も、登場人物も、言っていることも全ていいのだけど、ある種、割と一般的というか当たり前な事柄が多くてイマイチ心に響かなかった。
結婚2ヵ月前に婚約を解消された明日羽。落ち込む彼女は、それまでの自分は結婚という目的以外に「何も持っていなかった」ことに気づく。叔母のロッカさんに言われるままに「ドリフターズ(漂流者)リスト」を作り、自分が進むべき先を模索し始める明日羽。周囲の優しさに包まれながら、ゆっくりと自分の足で立つ方法を見出していく。
全体的に、あまりにも良い人、良い環境に恵まれ過ぎているのが、若干ご都合主義的にも思え、可哀想なはずの主人公に共感どころかあまり同情する気にもなれなくて...。温かな読後感を期待していたんだけど、どちらかというと「ぬるい」と感じた。
失恋を機に自分自信を見つめなおすという成長小説にしては、婚約破棄のくだりがあっさりしすぎだったのもひっかかる。あえて淡々と描いているのは分かるのだけれど、もう少し、主人公をどん底に突き落とさないと、立ち直っていく姿に感動とか共感めいたものも生まれてこないのではないだろうか。
そもそも、婚約者の描写や彼のことが好きだったと感じさせるディテールがなさすぎて、ただ悲しいと言われても、読者に伝わるものが少ない。とにもかくにも結婚を夢見ていた、というタイプの女性ならともかく、そうでもないようだし、どうもこのあたりの人物像も掴みにくい。ただなんとなく付き合って、なんとなくそろそろ結婚ということになって、そうしたら、なんとなく振られた、結果、なんだか悲しい、そんな感じ。
そのせいか、明日羽が周りの人から色んな助言をされ、物事を悟っていく過程も上滑りで理屈っぽく啓蒙本を読んでいるような気分になるのだ。
ただ、立ち直っていく過程としての食べ物の描写など、日常のディテールはとっても素敵。豆という食べ物は、なんだかとても生命力を感じさせる、と私は常日頃思っているので、明日羽の心が癒されていくイメージと結びつきやすかったのかもしれない。特別なことをするわけではなく、淡々と日々を過ごしていく中で、ゆっくりと立ち直っていく姿には好感が持てた。妙な「自分探し」に陥らないまっすぐな姿勢は、読んでいて気持ちがいい。毎日を丁寧に。うん、これは見習いたい、と思う。
でも実は、この小説のもう一つのキモとなっているリストについては私は否定的な考えを持っている。作中、恵というエステシャンが言った言葉と全く同じ理由からなのだけれど。
「リストなんてやめたほうがいい。リストって反面教師なのよ。(中略)...今日やれることは明日に延ばすな、って書く人はいつも明日に延ばしちゃう人でしょう。...つまり、不可能リストなの。そのリストに書かれているのはすべてあなたの弱点だってこと。本当に大事なこと、どうしても守りたいものは口に出したり紙に書いたりしないほうが賢明なんじゃないかしら」
私が啓蒙本を嫌うのも同じ理由からだ。例えば節約本なんて、そんなものを買うこと自体が節約できない人の証拠だと思うのだ。(もし私が節約本を書くとすれば、第一声は「節約したいなら、まずこんな本を買ったことを反省してください」にするだろうな。)節約本が啓蒙本かどうかはともかくとして(笑)。(どちらかというとハウツー本ですね)
なので、どう考えてもこの本は私向けではなかったとしか言いようがないです。啓蒙本嫌いな人、食べることに興味のない人、または豆を嫌悪されている方(笑)には合わないのではないかと思います。
太陽のパスタ、豆のスープ
宮下 奈都
★★☆☆☆
単行本:256ページ
集英社 (2010/1/26)
¥1,470
関連サイト
宮下奈都 (NatsMiya) on Twitter
http://twitter.com/natsmiya
作家の読書道 第109回:宮下奈都さん - 作家の読書道
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi109_miyashita/
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