もう一枚、海遊館の写真。水族館の生き物の中では地味だけど、クラゲが大好きです。最近は癒されるなどの理由から、ちょっと人気があるらしく、山形県にある
鶴岡市立加茂水族館はクラゲの展示種類が世界一ということで、ちょっと人気の水族館になっているとか。行ってみたいけどちょっと遠いな、山形県。
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さて、今日の本は三崎亜記の「手のひらの幻獣」です。
動物のイメージをあやつる異能力者の日野原柚月は、同じ能力を持つ者たちが所属する会社に勤めて早10年。孤独ながら安定した日々を送っていた。そんなある日、出来たばかりの新研究所を警備する業務を任される。しかしそこには異能力者のパワーを増幅する禁断の存在が隠されていて…。近くて遠い並行世界を描き出す2つの中編を収録。
「動物園」「図書館」に続く、
日野原シリーズの完結編となる
「研究所」と「遊園地」」の
中編2作が収録された一冊。
心の中の生き物のイメージを
具現化する力を持つ
「表出者」の日野原柚月。
10万人に一人とも言われる
その特殊な能力を持つが故に
抱える孤独と、自由に憧れながらも
しがらみにとらわれ続けていたいと、
どこかで願う彼女の中の葛藤が
描かれていたこれまでのシリーズ。
これまで表出者達は、
会社から派遣され
動物園などの施設で、展示が困難な
珍しい動物を幻視で「観せる」
ことを主な生業としてきた。
(時に図書館で野生を持つ本を調教する
といった仕事もこなしているけれど)
本作は、日野原個人が抱える問題、
あるいは彼女が務める会社と
競合他社との抗争といった、
これまで描かれてきた作品とは
少し趣きが異なり
表出者を取り巻く歴史が明かされ
国家を巻き込む、よりスケールの
大きな作品となっている。
表出者達は、先の戦争で、
本土決戦の隠し玉として育成され
軍の監視下に置かれていたが
戦後、民間利用を認められ、
日野原が所属する会社を含む
老舗5社が設立された。
動物園などで動物を表出させる
という古き良き時代は終わり、
同盟国からの圧力もあって
政府が表出者の力を再び
国家利用しようとする動きを見せるなか、
日野原が所属する
ハヤカワ・トータルプランニングは
政府の要請を受け、戦時中の
人体実験で生み出されるも、
そのあまりに強大な力ゆえ
凍結保存されていた表出実体、
ナナイロ・ウツツオボエを目覚めさせ、
制御しようと試みる。
しかし、そこに仇敵
SKエージェンシーの邪魔が入り
事態は予想外の展開を見せる。
2作の中篇の形を取ってはいるものの、
「研究所」だけでは完全には
物語は完結していない。
続く「遊園地」は「研究所」の一件後、
平穏を取り戻したかに見えた表出者達。
動物園での仕事の後、
日野原とその仕事のパートナ―
たくや君が近くの遊園地からの
呼び声を感じ取る。
果たして助けを求める
実体を持たない少女は何者なのか。
そして次世代遊園地として国が
建設した遊園地の秘密とは?
ある意味、「研究所」はこの
「遊園地」のための序章的な
1篇ともとれる構成となっている。
そして、上記のあらすじには
あえて触れなかったのだけれど、
社長と日野原との関係が
この作品のメインを占める
要素のひとつでもあり、
ようやくここで、この2人の関係が
明かされ、また結末を迎えることとなる。
「遊園地」に関しては、
ストーリーにミステリーっぽい
少しの捻りもあるし、
ラブストーリーっぽい展開もあったりで
退屈せずに読める作品だし、
舞台や設定はかなり好きな
タイプの作品ではあるのだけれど
なんだか以前どこかで
よく似た設定の本や映画を
観たことがある気がする、
という印象が拭いきれないのも事実。
面白く読める1冊だけれど、
このシリーズに関しては
国家の思惑とか戦争の歴史といった
仰々しい舞台設定よりも
「動物園」や「図書館」のような
現実からほんの少しだけ逸脱した
これまでの世界観の方が
個人的には好きだった。
私達の見てきた動物達の中に
表出者による擬態(?)が
あったのかもしれない
あるいは、深夜私達の知らないところで
本たちが飛翔乱舞しているのかもしれない、
と、空想してみるのが楽しい作品だった。
ところが本作では、日野原達の世界が
私達の生きる現実世界とは
完全に異なる異世界の物語と
化してしまっている。
そうなると、表出者の力も
普通のSFやファンタジーとして
捉えれば、特にどうってことのない
特殊能力でしかないように思えて、
そこに目新しさが感じられなく
なってしまったように思う。
単体として読めば、
普通に面白いファンタジーだと思うけれど、
これまでの日野原シリーズが
好きだった者にとっては
少し違和感を覚える作品かもしれない。
個人的には、もっと細々とでいいから
私達の日常と隣り合わせに存在する
表出者の世界を描いた
日野原シリーズの短編を
もっと沢山読みたかったな、と思う。
とはいえ、社長と日野原さんの
出逢いが描かれた番外編があるらしいので
番外編的短編が今後も続く
可能性はありそうです。
手のひらの幻獣
三崎 亜記
★★★★☆単行本:272ページ
集英社 (2015/3/26)
¥1,620
関連サイト
三崎亜記の世界 - 集英社
http://www.shueisha.co.jp/misaki-aki/三崎亜記 (@aki_misaki) | Twitter
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