今日の晩御飯。オクラと豆とエリンギのサラダ。なんの捻りもなく、名前通りの材料に、お気に入りのポン酢「
ゆずの村」をぶっかけて出来上がり。できればこれに大根おろしを加えると最高です。美味し過ぎて、どんぶり一杯食べてしまい、これだけで夕食にしてしまった。体にいいんだか悪いんだか...。
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さて今日の本は、近藤史恵の「ねむりねずみ」です。
内容紹介
しがない中二階なれど魅入られた世界から足は洗えず、今日も腰元役を務める瀬川小菊は、成行きで劇場の怪事件を調べ始める。二か月前、上演中に花形役者の婚約者が謎の死を遂げた。人目を避けることは至難であったにも拘らず、目撃証言すら満足に得られない。事件の焦点が梨園の住人に絞られるにつれ、歌舞伎界の光と闇を知りながら、客観視できない小菊は激情に身を焼かれる。名探偵今泉文吾が導く真相は?梨園を舞台に展開する三幕の悲劇。歌舞伎ミステリ。
※「BOOK」データベースより
先にシリーズ5作目『二人道成寺』
を読んでしまって
悔しい思いをしたので、さっそく
1作目を借りて読んでみました。
結局、別に1作目から読まなくても
問題ないシリーズだと改めて実感。
歌舞伎上演中に、人気役者の
婚約者が刺殺された。
梨園で起こったこの不可解な
事件の謎に挑む探偵今泉文吾。
そして、彼の学生時代の友人で、
中二階の女形、瀬川小菊も
次第に事件に巻き込まれていく。
さらに、事件と並行して語られる、
歌舞伎界の御曹司、
中村銀弥の謎の病。
接点の見えない二つのストーリーが
繋がる時、事件の真相が
明らかになっていく。
正直、ミステリーとしては、
被害者の死に方や、悲劇の発端となる
人々の動機や行動には、かなり無理が
ある気はするものの、
物語としては割と面白く読めた。
本書のヒロインの一子は、
夢見る少女のような女性で、
可愛らしい人なんだろうとは思うけれど、
梨園の妻になるべき女性では
なかったのだろうなと思う。
役者に限らず、芸事に従事する人、
特に秀でた人ほどそうであるように、
銀弥にとっては舞台が全てであり、
現実の恋愛沙汰など
二の次、三の次でしかない。
当然といえば当然なのだかれど、
結婚後にそれを思い知らされた
一子は、自分が愛するように
夫に愛されていないことに
悲しみと不満を募らせていく。
普通のサラリーマンと
結婚したわけじゃないのだから、
何をねむたいこと言ってんだか。
芸術家の妻たるもの、
夫の芸に対する執着もすべて
ひとまとめに愛してなんぼ、
ってもんじゃないか?
などと、ついエラそうな
お説教が頭に浮かんだりした。
愛するよりも愛されていたい
お嬢様、といった印象の一子には
正直同情はできなかったけれど、
といって、反感を覚えるほど
嫌な女性ではなかったので、
読んでいて不快感を覚えることはない。
ちょっと自己陶酔気味ではあるものの、
その物憂げな語りは、
素直に美しい世界を築いていて
読んでいて楽しい。
そして夢の中で少女のように
生きているのが似合う一子と、
まるで対極のような位置で生きる
もう一人の主人公、小菊の存在が
この小説を現実に引き戻し、
きりりと引き締める役目を果たしている。
著者の描く女性には、
一子のような女性がよく登場する。
自分とはタイプが異なり過ぎるせいか、
私はこういうヒロインには全く
同調できないのだけれど、
それでも不思議と著者の作品自体は
割と好きなのが不思議だった。
この作品を読んで、それは、
著者自身は厳しい現実も
しっかり見据えながら、こういった
ヒロインを描いているからではないか、
そんな風に感じた。
家柄で主役が決まる歌舞伎の世界が
不公平だ、という山本少年に、
小菊はシンプルにこう答える。
「じゃあ、他の世の中は公平かい?」と。
その言葉に、歌舞伎という
伝統芸能の世界の、
どこか封建的な匂いに、以前は
軽い嫌悪感を抱いていた私も、
(でも今思えば、それは憧れと
紙一重でもあったと思うけれど)
はっとさせられた。
どんなに綺麗事を並べても
悲しいことに世の中は
不公平なことだらけだ。
子供に夢を与えるために、
ハッピーエンドに塗り替えられた
ディズニー映画みたいなものが
蔓延しすぎたせいか、
ついつい勘違いしそうになるけれど。
名家に生まれたわけでもなく、
きっと一生、主要な役を
演じることはなくとも、
それでも私は、小菊のような人は
すごく幸せな人だと思う。
それほどまでに愛せるものと
出逢えて、それを生業にできるなんて
それだけで十分幸せなことなのじゃないか、
そんな風に思うのだ。
もちろん、だからこその苦しみが
伴うことも事実だけれど。
それにしても小菊の言葉づかいのせいで
慣れるまではどうしても
頭に浮かんでくるイメージが
新宿2丁目系のおネエに
なってしまったのには困った(笑)。
最後には慣れて気にならなくなったけど。
ねむりねずみ
近藤 史恵
★★★☆☆
文庫:286ページ
東京創元社 (2000/11)
¥693
関連サイト
近藤史恵 (kondofumie) on Twitter
https://twitter.com/kondofumie
作家の読書道:第71回 近藤 史恵さん
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi71.html
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