最近流行り、というか、すっかり定着しつつある、地ビールならぬ地サイダ―。
とうとう私の地元のものも登場したようなので、試してみました。炭酸が強くて甘さひかえめ。そしてほんのり梅の風味。うん、美味しい。
炭酸強めの「有馬サイダ―」が一番のお気に入りだったんだけど、これはそれに負けないくらいの強炭酸で私好みの味です。
梅は岡本サイダー 250円。
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さて、今日の本は、西加奈子の「うつくしい人」です。
内容紹介
他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた―。
※「BOOK」データベースより
自分が人からどう見られているのかを
気にするあまり、自分がどういう人間なのか
分からなくなってしまった主人公の百合。
周囲の目を気にしながら
びくびく生きることに疲れた百合は、
思い立って一人、瀬戸内海の島へと旅に出る。
そこで知り合ったのは奇妙なバーテンダーの坂崎と、
お金持ちで暇を持て余しているドイツ人、マティアス。
青い海に囲まれた島で、他人に注意を払わない
マイペースなこの二人と過ごすうち、
これまで自分が押さえつけ、誤魔化し続けていた
自分自身が解放されていくのを感じる。
冒頭から、やけに面倒くさそうな主人公だなぁ、と感じ、
読むのが面倒臭く(笑)なるかな、と懸念したのだけれど、
どん詰まり状態の百合の心理描写の中にも
著者持ち前のユーモアというのか、
暗くなりすぎないドタバタ感が所々姿を現すので、
それほど重苦しくもなく読み進めた。
おそらく瀬戸内海の
直島がモデルだと思われる
青い海以外何もない島(いや、本物の直島には
有名な美術館があるけど)で、徐々に心が解放されていく、
というのは、まぁ分かりやすいといえば分かりやすい。
ただそのきっかけを与えたのが、
美しい島の風景や、島の優しい人々という
ありがちな設定ではなく、なんだかヘンテコな
バーテンダーと外国人というところが、
良い意味で期待を裏切ってくれて、
退屈せずに読み進めた。
読み始めは百合のことを、単なる自意識過剰で
見栄っ張りな中二病的な女性かと思っていたけれど、
彼女の「美しい姉」に対する屈折した羨望の姿が
明らかになるにつれて、百合という主人公が
少しずつ理解できるようになってくる。
ただ自然に「自分」であり続ける姉の姿を
「美しい」と感じ、それとは対照的に、
人の顔色ばかり窺いながら
生きる自分を醜いと感じている百合。
その劣等感からか、羨望の裏返しのように
社会にうまく適応できない姉のことを
「自分は決してそうはならない」と見下すことで、
なんとか均衡を保っていた百合の心。
本当は自分自身でいられる姉のことが羨ましく、
そして何よりも大好きだっただけなのに。
なぜ百合にとって姉が、「うつくしい人」で
あり続けることができるのか、その理由に気付いた時、
それまでずっと「醜い」と感じてきた彼女自身もまた、
「誰かのうつくしい人」になり得ることに気付く。
人は自分にないものを持った人に憧れを抱くものだ。
シンプルに言えば、ただそれだけのこと。
そして、誰かを羨んでいる自分のことを、
別の誰かはいいなぁ~、と感じたりしているんじゃないか。
人間関係なんて、きっとそんなものだと思う。
とはいえ、たった2、3日で人の性格が変わるはずもなく、
百合のような人はきっと今後も同じ面倒臭いことを
繰り返すのだろうな、と私は思う。
でも、それでも例えばカートに乗った時に
湧き上がってくるように感じた「楽しい」という思いや、
島の住人達がホテル従業員に抱く素直な憧れを知り、
世の中は思っていたよりも優しいところなのかもしれない、
と感じたり、日々変わる海の様子に、自分一人くらい
変われないわけがない、と気付いたり、
そういったひとつひとつは小さな経験たちが、
次に彼女が躓いた時には、多少なりとも
力となってくれるのではないかと思う。
著者の他の作品にも時々見受けられる
色んなディテールの交通整理がうまくできていない、
というのか、とりとめのない雑多な印象が
個人的には若干気になったけれど、
変な「自分探し」小説ではないところが嫌みなく、
温かな読後感が心地よい作品でした。
こんなヘンテコな二人とは知り合いたくないけど(笑)、
直島に行きたくなった。
まぁ、うちからだと日帰りで行けちゃう距離なんで
たぶんあのホテルには泊らないと思うけど。
西 加奈子
うつくしい人
★★★★☆
単行本:226ページ
幻冬舎 (2009/02)
¥1,365
文庫:241ページ
幻冬舎 (2011/8/4)
¥520
関連サイト
西加奈子 Official Website
http://info.nishikanako.com/
作家の読書道:第53回 西 加奈子
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi53.html
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