茶室に生ける花を「
茶花(ちゃばな)」と呼ぶ。詳しくは知らないけれど、基本的に季節の野の花を、自然の姿を思わせる形で生けるというもの、らしい。現代的で派手なのより、こういうのがいいな、と私は思うのだけれど、野の花って、調達するのも楽じゃないよね、きっと。
以前から、生け花を習いたいと思いつつ、未だ果たせず。
まぁ、大体やりたい事だらけの人なので、大抵のことは果たせず終わっているような気がする。
う~ん、なんだかなぁ...。
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さて、今日は恒川 光太郎の「夜市」を読みました
内容紹介
妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。
※「BOOK」データベースより
ホラーって、普段あんまり読まないのだけど、
なんとなく表紙が気になり手にしました。
「夜市」と「風の古道」という2編の中編から成る
本なのだけれど、どちらも民俗学的な匂いのする
異界譚といった趣きで、ホラーと聞いて
想像するような怖さはない。
実は私は「夜市」よりも「風の古道」の方を
いたく気に入っている。でも、まぁ順番どおり
「夜市」から紹介しようと思う。
異世界間をまたいで開かれる夜市。
そこでは望むものは何でも手に入るという。
けれど、何か買わない限り、そこから出ることは出来ない。
子供の頃に夜市に迷い込んだ祐司は、
人攫いに弟を売り、代わりに野球の才能を手に入れる。
罪悪感に苛まれ続けた彼は、元同級生と共に、
弟を買い戻そうと再び夜市を訪れる。
が、そこで彼は意外な事実を知ることになる。
魑魅魍魎が集まる、夜市の描写や雰囲気は
ホラーというよりは幻想的で、
どことなく土着的な匂いも漂っていて
良い感じだとは思ったけれど、正直、
割と良くある感じの話かな、と思って読んでいた。
けれど中盤で、物語が一挙にひっくり返る。
なるほど、そういう話だったのか、と
ここで気付くのだけれど、そこから
全く想像していなかったストーリー展開を見せる。
良くできた話だとは思うのだけれど、兄と弟の話が両方とも、
ちょっと駆け足過ぎた感は否めない。
さささっと説明されて、へぇぇ~、っと
感心している間になんだか終わってしまった、そんな感じ。
雰囲気はたっぷりあるので読ませてはくれるのだけれど、
もう少し各登場人物を丁寧に描けていたら、
もっと面白く成り得たのではないかと思う。
そういう意味で、発想は面白いのだけれど、
なんだかもったいないな、というのが正直な感想だった。
そして「風の古道」。
個人的な好みかもしれないけれど、
これは結構ツボにハマった感じがする。
幼少の頃に迷い込んだ不思議な田舎道。
12歳になった主人公は、親友カズキと共に
その古道を冒険しようと試みる。
それが「ルール違反」だとは夢にも思わずに。
「夜市」同様、民俗的な色の濃い、
異世界を繋ぐ「道」の話である。
古道、鬼道、死者の道、霊道、樹影の道、神わたりの道...。
様々な呼び名はあるけれど、本来特別な人しか
入ってはいけない道。
そこに存在する様々な「決まり事」が荘厳で
ただの少年の冒険物語では終わらない
空気を創り上げている。
そして元の世界に帰ろうとする少年達が出会った
レンという古道を旅する青年。
彼が語るその人生が、悲しくもあり、
けれど何故かとても魅力的なのだ。
暗い運命を背負っているはずなのに、
まるで巡礼者のような、いやそれよりも
単なる気楽な旅人のような、
そんな身軽さを備えているような青年。
こちら側に入ることは出来ず、
古道に閉じ込められているともいえる
彼の方がよっぽど自由だと思えるのは何故だろう?
帰る場所という、ある種の執着を持たない彼の姿に
哀しさとともに、一種の憧れを感じるからだろうか。
読み終わって何故かふと熊野古道にハイキングに行きたいな、
と思った。その裏側に目には見えないけれど、
ひっそりと存在しているかもしれない
もうひとつの古道のことを考えるのは、きっと楽しいだろう。
幸か不幸か、私に行けるのはせいぜい
その辺りまでだろうなと思う。
ほんの少し『
蟲師』(映画ではなく原作の方)
を彷彿とさせる、そんな雰囲気の物語でした。
あんなに完成度は高くはないけれど。
夜市
恒川 光太郎
単行本:218ページ
角川グループパブリッシング (2008/5/24)
¥540
関連サイト
コウタライン - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/waiwaikotaro
第12回日本ホラー小説大賞受賞作「夜市」恒川光太郎
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200510-06/
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