
手作業でちまちまと物を作るのが結構好きだったりする。
基本的に飽き性なので、大きなものは作れない(笑)。写真はキルトのコースター。コースターばかりいっぱい作り置きがあったりします。なら同じ柄でもっと大きなもの作れよ、と思うのだけれど、一番大きなもので玄関マットという根性無しな私です。
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さて、今日の本は今村夏子の「こちらあみ子」です。
内容紹介
少女の目に映る世界を鮮やかに描いた第26回太宰治賞受賞作。書き下ろし作品『ピクニック』を収録。
※「BOOK」データベースより
なんだ、これは?
とても静かに繊細に描かれた小説なのに、
強烈なパンチをくらったような衝撃を感じた。
これは、凄い。
発達障害を持つと思われる、主人公あみ子の
その周囲から乖離したような、
不思議な視点で語られる、綺麗でいて残酷、
繊細でいて骨太な小説。
あみ子の障害については、一度も明言されることはない。
それは、あみ子自身が自覚していないから
ということもあるのだろうけれど、それよりも、
この小説の本質が、「障害を持つ少女の物語」
ではないからだと思う。
病名を出せば、あみ子は、例えば
アスベルガー症候群の少女、みたいな定義に
嵌められてしまって、下手をすると
それ以上でもそれ以下でもない
存在となってしまいかねない。
けれど、あみ子はあくまでもあみ子であって、
それ以上でもそれ以下でもない
存在として描かれている。
あみ子の言動は、それが純粋に
善意から生じたものであっても、
周囲の人々には奇異に映り、理解されない。
それどころか人を傷つけてしまったりする。
この周囲との「ずれ」が、あみ子自身にとって
そうである以上に、読み手にとってはもどかしく、
読み始めの頃は、彼女をうまく扱えない家族や、
時には、あみ子自身にさえ、読んでいて
憤りに似た、やるせなさを感じたりもした。
けれど、あみ子の目を通して
世界を見つめるうち、なぜだろう。
自分の信じていた世界が、
その感覚が逆転していくのを感じるのだ。
読み始めの頃は、周りに理解されず、
嘲笑されたり、苛められたり、
無視されたりするあみ子をどこかで可哀想だと
感じている自分がいた。
なのに、途中から、あみ子ではなく、
周囲の人達の方こそ、本当は可哀想なのではないか、
という気がし始めるのだ。
周囲の人達、それはつまり、自分を含めた、
社会に適応しながら生きるすべての「普通」の人々。
調和を乱さないよう、常に周囲に気を配りながら
日々過ごす、まるで臆病な小動物のような私達。
それに比べて、社会的には酷く非力に思える
あみ子は、まるで野生動物のように自由で力強い。
犬の群れの中に紛れ込んだ猫。
なんだかそんなイメージが頭に浮かんだ。
ちなみに、この小説の元のタイトルは
『あたらしい娘』だったそうだ。
『こちらあみ子』という商業的インパクトに長けた
タイトルを採用することとなった経緯は
想像がつくものの、読み終えると、(まぁ、当然だけれど)
原題の方が小説の本質を言い表していると感じた。
この小説は、あみ子という少女を、情景豊かに、
けれどあくまでもありのままに描いた、
ただそれだけの作品であって、
『こちらあみ子』というタイトルが想起させる
外へ向かっての(一方的な)呼びかけを
描いたものでは決してないように思うから。
とはいえやはり「掴み」であるタイトルとしては
『こちらあみ子』の方が優れているのだろうな、
とも思うのだけれど。
そして、もう一編収録されている書き下ろしの
『ピクニック』は、表面的には優しげで
牧歌的でさえある語りの中に、
女子特有の苛めの形が隠されていて、
最後にぞぉっと寒気を覚えた。
最初に戻って読み返すと、怖さ倍増でした。
決して好きなタイプの話ではないけれど、
『こちらあみ子』とはまた違った趣の
凄みのある作品。
今村夏子という作家は、繊細にそして綿密に
こういった「世界の逆転」を描くことが
天才的に巧いのかもしれない。
次の作品が待ち遠しい、そう思える作家です。
こちらあみ子
今村 夏子
★★★★★
文庫本:199ページ
筑摩書房 (2011/1/10)
¥1,470
関連サイトこちらあみ子 [著]今村夏子 - BOOK asahi.com
http://book.asahi.com/review/TKY201103220149.htmlこちらあみ子』 今村夏子著 : 書評 : 本よみうり堂
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