お気に入りのカフェの一つ、
miel cafe and books。最近流行りの焼きドーナツ店のようですが、三宮店はブックカフェになっていて、好きなのを読みながらお茶が出来ます。今回手にしたのはこの2冊。でも焼きドーナツって、形がドーナツなだけで、実はマフィンとかパウンドケーキの一種だよね、って突っ込みはなしか(笑)。
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さて、今日の本は、万城目学の「プリンセス・トヨトミ」です。
内容紹介
このことは誰も知らない―四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。秘密の扉が開くとき、大阪が全停止する!?万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。
※「BOOK」データベースより
本の帯や、映画の宣伝文句にもなっている「大阪全停止」という
叩き文句や、紹介文を読んでも、内容があまり予測できないな、
と思いつつ読んでみました。
結論から言うと、本自体は面白かったのだけど、この叩き文句が
逆に仇になった感じがしなくもない。「大阪全停止」が本書のキモな
わけではなく、中途過程でそうなったのだし、物語のテーマも
全然違ったところにあるのだと思う。
紹介文などからなんとなく読む前に勝手に抱いていた
歴史冒険モノっぽいイメージとは随分違ったものだった。
といっても、「がっかりした」という意味では全くない。
むしろ逆で、いい形で裏切られたなと思っている。
大阪には、大阪の男しか知らない、もうひとつの歴史がある。
会計検査院の調査官が怪しいと目をつけた「社団法人OJO」の
調査をするうちに、戦国時代から受け継がれてきた、
大阪の秘密を知ることとなり...。
物語は、松平、鳥居、旭の3人の調査官と、
大阪城にほど近い下町の中学生、女の子になりたいと願う大輔
と、その幼馴染の茶子を中心とした、大阪側の両視点から描かれる。
著者が大阪出身ということもあり、大阪人にとっては、
良く見知った土地や人々が無理なく自然に描かれていて、
描かれている大阪の街になんだかとっても「懐かしさ」を覚えた。
荒唐無稽な歴史ファンタジーではあるのだけれど、脈々と
受け継がれるものを通じての、父と息子の関係がより大きなテーマに
なっていて、結構じーんとくるシーンもあったりする。
まぁ、私はあんまり「太閤さん」びいきではないので、秀吉の末裔
というところには特になんとも思わないし、実際、大阪人だからといって、
豊臣秀吉に特別な思い入れがある人に会ったこともない。
実はこの小説も、太閤さん云々より、大阪人が皆で「守ってきたもの」
という絆めいたもの、そして何より、父と息子の信頼関係を軸に
築かれてきた伝統みたいなもの、それが重要なのだと思う。
そして、何故、大阪の「男だけ」が受け継ぐの?と、
世のフェミニストたちに叱られてしまいそうな設定に、
少し首をかしげたくなるのだけど、そこは主人公の大輔が
「女の子になりたい男子」だという設定から、ひと捻りあるのだろう
という予感があって、なかなかうまく出来ている。
「いや~、女にはかないまへんわ」、というおっちゃん達の
声が聞こえてきそうな最後は、ちょっとにんまりしてしまう。
若干、説明が冗長で、先の見える伏線が多く、クライマックスに
達するまでが長すぎる感じはするものの、個性的な登場人物が
魅力的に動き回っていることで、それもカバーできているように思う。
登場人物の名前が戦国武将の名前になっているのも楽しいオマケ。
欲を言えば「橋場茶子」はストレート過ぎて、もうひと捻り
欲しかったかな~、と思わなくもないけど、まぁ、
このあたりはあくまでオマケってことでよしとしよう。
ちなみに、映画では私が一番気に入っている鳥居が、女という設定で、
綾瀬はるかが演じるらしい。残念すぎるんですけど...。
最近の大作映画って、なんだか美男美女系のオンパレードで
つまんないと思うのは私だけ?
なんか、観る前からお腹一杯になりそうで...。
箸休め的というかなごみ系の味のある3枚目が1人は欲しいなと思う
んだけど、まぁ製作側、事務所側の意向が色々あるんでしょうね。
私の勝手なイメージでは鳥居役はドランクドラゴンの
塚っちゃんあたり、ハマり役だと思ってたんだけどな。
あと、真田幸一が中井貴一っていうのも、インテリっぽ過ぎて
イメージが違うような...。あの大阪の頑固親父(でも家では
普通のおやじ)って感じがいいのにな。
でもまぁ、この小説で描かれている大阪独特の雰囲気を、
どんな風に「嫌味なく」映像化してくれるのかはちょっと楽しみです。
プリンセス・トヨトミ
万城目 学
★★★★☆
単行本: 512ページ
文藝春秋 (2009/2/26)
¥1,650
文庫: 554ページ
文藝春秋 (2011/4/8)
¥750
関連サイト
作家の読書道:第74回 万城目学さん
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi74.html
映画『プリンセス トヨトミ』公式サイト
http://www.princess-toyotomi.com/
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