100円自動販売機で見つけた「復刻版 ウルトラ大怪獣レモネード」。
別にウルトラマンとかといったものに興味はないのだけど、レモネードが飲みたくなったのと、ちょっとした好奇心でつい購入。ちなみに全部で9種類の缶があって、これは「レッドキング」という、なんとなくハズレっぽい感じの怪獣。どうせならバルタン星人あたりがいいな。←それしか知らなかったりする。
肝心のお味はというと... あんまり期待してなかったけど、期待通りな感じでした(笑)。
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さて、今日の本は、恩田陸の「月の裏側」です。
内容紹介
九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは“人間もどき”の存在に気づく…。
※「BOOK」データベース より
「
盗まれた街」「
遊星からの物体X」みたいな作品を日本的な情緒
と融合させて描きたくて書き始めたものの、途中から収集がつかなくなって
後半は惰性で書いた、そんな印象のとても残念な作品だった。
あまりにもがっかりしたので、すみませんが、ちょっと愚痴ります。
知らない間に人が人ではない何かにすり替わっている、という内容は、
特に目新しい発想でもない分、期待するのはその正体や目的、
あるいは展開、そしてオチ、なのではないかと思うのだけれど、
そのどれをとっても不十分で、不満が残ってしまう。
本作では、「盗まれた」人(本作品では、水様の「何か」に乗っ取られた、
あるいは、取り込まれた人のことをこう呼んでいる)も、
元の記憶や人格をしっかりとそのまま持っている、という設定である。
つまり「盗まれた街」のように、外見が同じで中身が別物なのではなく、
中身も同じ人格のままなのである。
では何が変わったのか、というところが
ポイントではないかと思うのだけれど...。
要約すると、何か大きなひとつのものの意識に取り込まれ、
個々の人格はそのままではあるけれど、どこか無意識の中で、
他者(他の「盗まれた」人や動物達)と繋がっているということらしい。
つまり、人は他者と異なる「個」でありたいと願う反面、
「共同体」として「ひとつ」になりたい、という相反する生物的願望を
持っていて、水のような「何か」は、人を「ひとつ」にするもの、
として描かれているのである。
とはいえ、「ひとつ」になった人達は、それまでの人格を
しっかりと持ったままで大きな変化はない。
そして、本人達はその経験を、なにがかはわからないけれど、
好ましい感覚として捉えている。
外見的な変化は、というと、驚いた時の反応や、
ぼんやりしている時など無意識時の行動がシンクロする、
とか、時折、目が虚ろ、とか(いや、普通の人だって、たまには
虚ろな目くらいするでしょ、と突っ込みたくなるのは押さえるとして)、
そんなことくらいしか描かれていない。
本当に起こったらともかく、小説として読むには、
このくらいの変化、害もなければ、ちっとも怖くないのだ。
あと特記すべきこととしては、肉体を構成する成分が
なにかしら変わったこと(火葬にしても骨が残らないらしい)、
つまり、生物学的には、たぶん人間ではないものになって
いるみたいなんだけど(詳しくは不明のまま)、これにしても
小説として、グロテスクなシーンを描くために必要だっただけで、
何故そのような変化が必要なのかは謎。
つまり、中身は自分のまま、外側は見た目は同じだけれど、
成分だけ(何故か)別物になっているという、
どういう必要性があるのかが分からない不思議な変化を遂げるのである。
しかも、何のために、という目的も、変化した後、何かが起こる、
という結果もオチもなにもなく...
「ひとつ」になった人が、そうでない人間を迫害する、とか
「ひとつ」の意志が何かを目指す、といったようなこともなく
普通の平和な日々が営まれている。
極端なことを言えば、私は脳の中身が私のまんま、
見た目も私のままで、健康状態も良好なままであるなら、
体の構成成分がちょっと変わったとしても、(ちなみに
病院の検査ではなぜか引っかからないみたいですし)
そして、びっくりした時に、皆同じポーズをとる、という
コメディーのような癖が増えるくらい、まぁ、いいかな、
と思えなくもないんですけど。
いや、そりゃ気持ち悪いけど、でも宇宙人に意識を乗っ取られる、
とかに比べりゃ、なんてことないかなと。
なんだか、「個性」と「共同体」、「マジョリティ」と「マイノリティ」
となんだか壮大なことを語っているようでいて、
中身が空っぽな印象が最後まで拭えない。
それでも最後まで少し期待していたのが、登場人物の一人が
「盗まれた」時に、その経験や変化をどういう風に感じるのか、
というところだった。
が、これも完全に裏切られた。
それまで、好ましい感覚としてとらえられていたはずの
「変化」が、いざ主人公の1人に起こった時には、何もないのである。
その人は、ただひたすら、自分は何か変わったのだろうか?
(ここに至ってまだ疑問形!)、そして、自分が「人ではなくなった」
ことを周囲に気づかれるのではないか、と恐怖するだけで、
いい気分、でもなければ、何かが変わった、という自覚すらない。
こういった矛盾が他にも数多く登場して、とにかくもう
つっこみどころ満載(笑)。思いつきで書き始めたものを
書きながら構築していった感じが色濃く漂う。
なんだかもうここまでくると、いっそこの小説全部が、パラノイア患者4人の
妄想劇だった、っていう陳腐なオチでもつけてくれた方がすっきりしたかも。
郷愁漂う水郷都市の情景描写など、とにかく筆力のある作家さんなので、
特に前半部分の舞台設定を整えるまでの過程は読ませてくれる。
けれど、それ以前の根本的なストーリーが存在しない。
この日が「世界の終わりにして始まり」というような、
やたらと思わせぶりな言葉や表現が度々登場するも、
そのほぼすべてにオチがなく、最後まで肩すかしをくらわされ続ける。
以前から、あたりはずれの多い作家さんだとは思っていたけれど、
これは明らかに失敗...。
多分、しばらく恩田作品は読まないと思う。
月の裏側
恩田 陸
★☆☆☆☆
文庫:461ページ
幻冬舎 (2002/08)
¥680
関連サイト
作家の読書道:第36回 恩田 陸さん
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi36.html
恩田陸オンライン
http://rokusayo.milkcafe.to/
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