桜が満開です。やっぱり春はいいですね。今年はなかなか温かくならなくて、かと思えばあっという間に春になったような感じ。もう少し、じわじわとやってくる感じが好きなんだけどな。でもまぁ、せっかくの春です。外に出なきゃ!
花見もいいけど、ハイキングに行きたいな。
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さて、今日の本は、宮下奈都の「メロディ・フェア」です。
内容紹介
大学を卒業した私は、田舎に戻り「ひとをきれいにする仕事」を選んだ―。注目の著者が、まっすぐに生きる女の子を描く、確かな“しあわせ”の物語。
※「BOOK」データベースより
なんというのか...。感想を書くのが難しい。
ササッと読めて、可もなく不可もなく、かろやかな内容のようでいて、
最後までもやもやしたものが晴れないまま、
小説だけが、やけに爽やかに終わっていき、
なぁんとなくついていけなくて、取り残された、そんな読後感。
悪意もなく、みな幸せな物語、
なのに、もやもやもやもや...。すっきりしない。
なにがそうさせるのか?
ビューティー・パートナー(化粧品の美容部員)として、
一喜一憂しながらも、仕事にやりがいを見出していく主人公、
結乃の姿は、確かに読んでいて好感が持てる。
化粧、という女性を綺麗にするアイテムで、ほんの少し、
周りの人に幸せに、というテーマも決して嫌いではない。
いや、むしろ大賛成、と言いたいくらいである。
私自身も、多分に漏れずお化粧するのは大好きだ。
が、しかし、である。
この小説に登場する、結乃の葛藤となる事柄、
鉄仮面のような化粧で武装する幼馴染、
仕事が性に合わず退職した美人の前任者、
化粧を毛嫌いする妹との確執... など、
このあたりが、なんとも駆け足で、散漫な感じ。
まず気になるのが、それぞれが抱える根の深そうな問題が、
何故か結乃のお化粧ひとつで魔法のように、
あっという間に解消されてしまうことだろう。
特に才能に恵まれた人物、という設定でもないのに、である。
たとえば化粧や姉の職業をもの凄く嫌悪していた妹までが、
結乃の「化粧してあげる」、という一言でなぜかあっさりほだされ、
化粧をさせたかと思いきや、過去の化粧に関するトラウマを思い出し、
(多分それによってふっきれて、なのか)
数日後には口紅を購入するに至る、という性急さで、
前半引っ張っていた姉妹のわだかまりはなんだったの?
と、取り残された私はもやもや...。
そして、何より、それらの描かれ方。
一見、主人公の成長物語のように見えるのだけれど、
その実、まるで「自画自賛物語」のように感じられて、
後半はほとんど嫌みにさえ感じられたのは、
私がひねくれているからなのか?
親友に対しても、妹に対しても、主人公は
一段高いところから見降ろして、常に「正しい」位置にいる。
この人はきっとこうなんだ、だから私がこんな風に化粧をすれば、
ほら、こんなに素敵になって、ほらほら、わだかまりも溶ける溶ける...。
ああ、私はやっぱり正しかったのだわ!
そういう自己陶酔がそこかしこに漂う。
主人公結乃の陶酔、ではなく多分これは著者自身のものではないか、
という気がして、小説なのに、主人公ではなく書き手の意思が
あちらこちらに匂うのが、鼻について仕方がない。
同著者の「
太陽のパスタ、豆のスープ」を読んだ時に感じた、
どこか「啓蒙本」的な空気、というのは、
この著者自身の気配が小説内に濃く漂っていたからかもしれない、
とこの本を読んで改めて気づいた。
いや、もちろん書き手の意思が作品内に存在するのは
当然のことなんだけれど、小説の場合、実用書とは違って、
登場人物や出来事の中に作者の主義主張をうまく潜ませて初めて、
読み手に共感とか感動を与えることが出来るのではないかと思う。
書き手の存在(=小説世界では神様であり、同時に黒子でもある)
が表出すると、物語世界が作り物めいて感じられ、
どうもしらけてしまう、そう思うのは私だけだろうか?
もっと丁寧な人物描写が出来る作家だと思うだけに、
なんだか残念で仕方がない。
例えば、お嫁さんの悪口ばかりいっていたのに、
最後の最後に結乃を頼り、口紅を購入する浜崎さんの
エピソードは些細なようでいて心に響くものがある。
妹や親友の問題についても同じようにもっと丁寧にさえ
描けていれば、多分私はもやもやすることなく
もう少し登場人物達についていけたのだろうと思う。
とにかく、いろんなディテールを消化しきれてなくて、
すごく上滑りな印象、なのに最後はみながみなとっても幸せ。
このとってつけたようなハッピーエンドが
またなんとも私のもやもやを募らせる。
なんだか幸せの押し売りにでもあったような気分だ。
10日後には、内容をきちんと思いだせないかもしれないな、
そんな風に思ってしばらくしてから、頭に浮かんだ
「メロディ・フェア」のフレーズ。
このポピュラーな曲と、内容とうまくリンクした歌詞が、
印象に残りにくい、若干散漫な印象の小説を、
あくまでも可愛らしいイメージの作品として、
後々まで記憶にとどめてくれるかもしれない。
最後には、そんな気がした。
メロディ・フェア
宮下 奈都
単行本: 256ページ
ポプラ社 (2011/1/14)
¥1,470
関連サイト
インタビュー 宮下奈都さん~『メロディ・フェア』
http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen05/P/12009.aspx
宮下奈都 (NatsMiya) on Twitter
http://twitter.com/natsmiya
作家の読書道 第109回:宮下奈都さん - 作家の読書道
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi109_miyashita/
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