昨日、奈良の明日香村で、日本書紀の記述と一致するとして、飛鳥時代の女帝、斉明天皇の孫娘の墓ではないかと注目を集めている古墳の見学会が開かれたらしくて、ニュースで取り上げられていた。考古学には全く詳しくないけれど、明日香村の遺跡めぐりが結構好きでハイキングを兼ねて時々訪れる。のどかでいつ行ってもあまり変わらない景色に癒される。奈良は京都と違って学生の遠足時期と重ならない限り、人も割と少なくてのんびり行けるのも良いところだ。
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年末の大掃除に先駆けて、本の整理をしていたら、なんだか懐かしい本がたくさん出てきた。こうなると、ついつい整理整頓をほったらかして読み耽ってしまう。
というわけで、今日の本は、酒見賢一の「後宮小説」です。10年以上前に読んだ本。今読み返しても懐かしくて面白かった。なんだか得した気分♪
内容紹介
時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の
後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、
女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが
折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に
立ち向かうはめに…。さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジー
ノベル大賞受賞作。
※「BOOK」データベースより
たしか友人に勧められて読んだ記憶があるのだけれど、中国史にあまり興味がなかった無知な私は、てっきりこれは、中国史をを元に描かれた物語なのだと信じて読み進めた記憶がある。どの時点で、これが完全なフィクションだということに気付いたのか、覚えていないのだけれど、最後まで、そう信じ込んで読んだような気もする。(あとがきを読んで、騙された~、と思ったような、ぼんやりとした記憶が...)
漢文調の文献からの引用(もちろん全部でっちあげ)もしばしば登場し、いかにも、な雰囲気を盛り上げている。ちょっとした歴史小説を読んでいるような気分にさえなれる。
ところが、これが全部丸ごと作り物。「中国らしき国がモデル」のフィクションなのである。
内容は、中国らしき国の後宮に「三食昼寝付き」に惹かれて入宮することを決めた田舎娘の銀河が、後宮の奇天烈な(!)教育を受け、ついには正妃となり、宮廷に渦巻く陰謀と民の反乱に巻き込まれつつ、逞しく生き抜く物語である。
こう説明すると、なんだ、フツーじゃん、という感じもするけれど、この小説の面白いところは、まるで本物の歴史小説のようなクソ真面目な語り口調で、下ネタを哲学的に語ったり、どこにも存在しない歴史的事実を、まるで本物のように解説したりするところである。
腹上死であった、と記載されている。
腹英三十四年、現代の暦で見れば、十六〇七年のことである。
出だしから、これである。真面目なのか不真面目なのか全く?である。
また、皇帝を始め、銀河を取り巻く人々も皆素っ頓狂である。後宮の「女大学」で教鞭を執る角先生や菊凶は、クソ真面目に哲学を語っているが、その哲学は詰まるところ、宮女たちへの性技術の講義だったりする。いかにも史実に基づいているかのような解説をしているが、もちろんこれも著者の作り話。後に、妓楼の女将となり、後宮仕込みの房中術によって有名になったセシャーミン、寡黙な少数民族の村出身の江葉、弟に異常な執着を持つ玉遥樹など、他の宮女達も皆個性的であるし、後に「退屈だったから」という理由で反乱の首謀者となる幻影達と混沌も皆魅力的だ。
まぁ、ある種歴史をおちょくったような可笑しい小説ではあるのだけれど、フィクションとはいえ、歴史物にただよう、一種のもの哀しさも持ち合わせているところは見事。
世知辛い世の中に嫌気がさした時にでも読んでみてはいかがでしょうか?
あ、ちなみにこれ、「雲のように風のように」というタイトルでアニメ化されています。一見ジブリ作品?と思わせるアニメです。(実際は、ジブリ作品にも参加している人が監督しているからよく似ている、らしい)これも、大昔に見た記憶があります。最初、この原作をアニメ化(しかも民法放だったらしい)と聞いてびっくりしたのだけど、見てみると、全然別物に変身していました。そりゃそうだ。
どうやら、第一回ファンタジーノベルの大賞受賞作がアニメ化される、と選考前から決まっていたようで、これはある意味苦肉の選択だったのではないか、と制作者側の苦労が感じられる作品。このアニメを見た後に原作読んだらひっくり返りそうだな、と思う。ちなみに私は全く別物として、両方とも大好きです。まぁ、賛否両論はあるかと思いますが。ちなみに、アニメには「腹上死」なんて言葉は出てきません。子供が見ても大丈夫な仕上がりになっていたと思います。
後宮小説
酒見賢一
★★★★★
文庫:288ページ
新潮社 (1993/04)
¥500
関連作品
雲のように風のように
DVD:80分
¥3,559
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