散歩していて見つけたスミレ。
12月にスミレって咲くの?と不思議に思いつつぱちり。岩の間から逞しく生えてました。
日本はスミレの固有種がかなり多いらしく、50~60種くらいあるのだとか。これはヒメスミレかな?と思いつつ、あんまり自信はない。
こういう、小さい草花は大好き。ひっそり咲いているのを見つけると嬉しくなります。
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さて、今日の本は、恩田陸の「光の帝国―常野物語」です。
光の帝国、とはなんと仰々しいタイトル!と思ったのですが、基本的には優しいファンタジーでした。
内容紹介
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通す
ちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力が
あった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれ
てひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとし
ているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短
編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
※「BOOK」データベースより
常野物語、と聞いて、柳田国男の「遠野物語」をまず連想した。読んでみると、意識しているのではないか、と思えるところがないこともない。遠野物語は岩手県の遠野に伝わる民間伝承(雪女とか山神とか)だったけれど、こちらは宮城県のどこか、とされる常野の人々の話。東北は仙台にちょっこっと行ったことがあるくらいで良く知らないからかもしれないけど、私にはなんだか神秘的な場所に思える。
不思議な力を持つ常野の一族は、常野を離れ集落を形成することなく、ひっそりと現代に暮らしている。人の記憶も含め、ありとあらゆる情報を「しまう」能力 未来を見通す「遠目」など、彼らは皆、特殊な力を持つが、権力には興味がなく、権力者達に利用されることを好まない「優しい」人々として描かれている。
短編集ではあるが、同じ人物が登場したり、同じ人物について、別人の視点から描かれていたりと、互いにリンクしている。
また、常野の人々の能力も様々である分、各ストーリーもバラエティ豊かで、牧歌的なものから、ゾッとさせるSFっぽいものまで、時代も場所も様々な物語集となっている。それぞれが個性的で、一貫性があるような、ないような、不思議な一冊。メインストリームは、「手紙」「光の帝国」「国道を降りて...」の流れで、これらが常野一族についての説明的な位置づけになっている。また、「大きな引き出し」「二つの茶碗」「歴史の時間」「黒い塔」の4作もそれぞれ繋がっていて、今後、このシリーズのメインの1つになるだろうと予想される(「大きな引き出し」の春田一家が登場する続編「蒲公英草紙」はすでに出版されているけれど、これは、上記の短編とは別の物語となっている)。
また、この中でSFっぽい異色を放っている「オセロゲーム」の続編、「エンド・ゲーム」も出版されている。「オセロゲーム」は、絶え間ない「あれ」との「裏返し」「裏返される」戦いを続ける運命にある家族の話。こう言っても、なんのことか「?」だと思うけれど、読んでもなお謎だらけである。そのため続きを早く読ませて欲しいと思わせる。要するに、この短編は単なる序章にすぎないというわけだ。
「オセロ・ゲーム」だけでなく、「光の帝国―常野物語」自体が、常野一族の壮大な物語の序章となっている。いや、序章というよりサンプラーのようなものだろうか。少しずつ色んなものの味見が出来る、という、食べ物であれば、世の女子が好きそうな代物である。
作家のネタ帳を広げたものをシリーズ化して一冊にまとめたもの、と言えなくもないわけだけども、最初、これを読んだ時には、正直なんともったいない、と思った。1話1話、中長編の独立した小説に出来るだろうに、と思ったのである。結局のところ、続編という形でシリーズ化しているようなので、なるほどなと納得したわけだけれど。
個人的に好きな「達磨山への道」はこの中では独立しているように思うのだけれど、これも続編が用意されている様子。作品中で少し言及されている4人の少女の神隠しの話、ということなので、楽しみにしている。あとは、「二つの茶碗」の篤のその後についても、きっとそのうち分かる日が来ると思う。
また、これも独立したエピソード「草取り」は、この中ではどちらかというと「オセロゲーム」寄りの少し気持ち悪い系ではあるけれど、私は結構気に行っている。「草」が何なのか分からないところも気になるし、何かの形で続編を期待しているのだけれど... これは、どうかな?
なにはともあれ、この「光の帝国―常野物語」は序章としてはもちろん、これだけで1作品として十分楽しむことができる一冊となっている。とはいえ読んでみると続きが気になることはまず間違いない。
続編の「蒲公英草紙」と「エンド・ゲーム」はまたの機会に紹介したいと思います。
光の帝国―常野物語
恩田 陸
★★★★☆
単行本:272ページ
集英社 (2000/9/20)
¥1,785
文庫:288ページ
集英社 (2000/9/20)
¥520
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