我が家の庭には、割と雑草と呼ばれる植物が自生している。両親が山野草に凝っていることもあり、ちょっと可愛らしげな花とか咲いてるとつい放置してしまう。お陰で 野趣あふれる、といえば聞こえはいいが、単なるいい加減な庭になり下がっている。
野草、って呼ぶと雑草より随分上品になるから不思議。同じ物のくせに。
写真はもともと鉢植えだった野いちごがいつのまにか庭中に自生してしまったもの。花が可愛いし、実は美味しいしで、これも放置。こうやって計画性ゼロの庭が出来上がっていく。でも気にしない。
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さて、今日の本は有川浩の「植物図鑑」です。
この本、とにかく表紙が素敵ですね~。この方のイラストが表紙の本って、いつもベストセラーになっているような気が...
内容だけでなく、ブックデザインも「売る」ためには大切な要素ですね。
内容紹介
ある日、道ばたに落ちていた彼。「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれ
ませんか? 咬みません。躾のできたよい子です」「―あらやだ。けっこう
いい男」楽しくて美味しい道草が、やがて二人の恋になる―。
書き下ろし番外編に加え、イツキ特製“道草料理レシピ”も掲載。
※「BOOK」データベースより
妄想女子向け現代版童話、といった趣きの小説でした。これは拾ったカエルは王子様だった、というヤツだな、と思ったら、全くその通りだったあまりにも思ったとおりの結末過ぎて、いっそ潔いなとさえ思えた。
いえ、けなしている訳ではありません。結構、というか、かなり楽しんで読みました。噂に聞く(?)有川浩の「べた甘」というのは、コレか... ううっ...たしかに読んでてこっちが照れる! という所は多々あったけれど、主人公のさやかもこれがかなり痒い、という自覚がある(というか著者自身に自覚があるのだろうなと思う)ので、そんなに心地悪くはない。甘ったるい事柄に関する主人公の反応が読み手の感情と重なるので、ギリギリのところで共感できるわけだ。これで主人公の女子までうっとりしているようなら、全くついていけないところだけれど、ベタ甘なわりに女子側は割と現実的に出来事を捉えているので無理がない。なるほど、有川ファンが多いのも納得できる。ただし、「植物図鑑」に限っていえば(他はあんまり知らないので)、あくまでも女子向けかもしれない、とは思う。男子からするとこれは微妙かも。さて、どうなのでしょうねぇ...
行き倒れているイケメンを拾ってみたら、これが植物図鑑のような男で、彼と彼の趣味でもある野草採取と絶品道草料理に主人公女子が完全にやられてしまう、という話。うん、我ながら凄まじい省略(笑)。
触れ込みでは、本物の草食系男子ネタっぽく言われていたけれど、このイツキ君は草食「系」ではなく正真正銘の草食(=草を食う)男子である。つまり、世間でいうところの「草食系男子=恋愛やセックスに消極的な若い男性(from Wikipedia)」の話という訳ではないんだ、とすぐに気付く。草食系男子の定義にもよるだろうけど、これは草食系男子というより、古典少女マンガの王子ではないかと思う。見た目良く優しく正体はナゾ(特にここがポイント)、甘い台詞をしれっと言ってのけ、見たことのない世界を見せてくれる。
古典だ。あまりにも教科書通りである。
ただ、その「世界」が野草と料理という、なんとなも安上がりでマニアック、そのうえなんだか「へなちょこ感」まで漂うところが現代風でもあり、一挙に古典を吹き飛ばす。
このイツキの野草うんちくとそれを使った料理をメイン(と私は思っている)に、甘~い恋愛スパイスを振りかけ、そこにイツキの正体という隠し味を利かせたお伽噺、というところ。元々携帯小説という形で出版されたということで、話の展開が異様に早くてびっくりする箇所(特に同居を開始するに至る立ち上がり部分)も多いけれど、まあ、お伽噺だから特に気にする必要はない。逆に、限られた文字数の中に無理なく必要情報をのせることが出来るのは技だとさえ思う。
正直言って、本来こういう甘ったるい恋愛モノはあまり得意ではないのだけれど、メインに据えられた野草に興味深々なので、かなり楽しく読み進んだ。
出てくる野草のうち、何種類かは確実に我が家の庭に自生しているし、ノビルにいたっては、雑草扱いでバンバン根こそぎ(球根ごと)抜いて捨てていた... まさか、あの球根が美味しいなんてつゆ知らず。ああ、もったいない。
私も図鑑なんぞ買って野草採取がしたくなってきた。でも、図鑑片手に頑張ってみても、なぜか私は毒草を食べてしまいそうな気がする(汗)。そんなことを考えて、野草を口にする前にまずは身辺整理すべきか?などと考えて、結局面倒臭くなって食べないで終わりそうだ。
ああ、面倒臭い性格。
ヘンなストレスが溜まりそうだから、やっぱりこれまで通り、庭のハーブを摘んで食べる程度にしておこう。普通でつまんないけどさ。
イツキの素姓にあまりにも捻りがなさすぎたので、星4つかな。
植物図鑑
有川浩
★★★★☆
単行本:359ページ
角川書店(角川グループパブリッシング) (2009/7/1)
¥1,575
関連サイト
作家の読書道 第68回:有川 浩さん
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi68.html
表紙のイラストレーター、カスヤナガトさんのブログ
Guitar Girls Addiction
http://gga.sakura.ne.jp/
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追記
庭に自生しているネジバナ。
あまり良い写真がなかったのが残念。螺旋状の花がユニークなんだけど、なかなか風情のある草花なので放置している。近所の園芸店で山野草として売られていたのを見てから、時々実家の両親に分けたりしている。