最近、山ガールとか森ガールとか、巷で山歩きが流行っているようですね~。
そんな洒落たものとは関係なく、以前から山歩きが趣味の友人に、半ば無理やり長野に拉致られて、山に行ってきました。
山スカなんかとは無縁の、どちらかと言うと登山部、といった様相の私達(笑)。
写真は下山時に、いきなり目の前に現れた湿地。ススキ野が広がって、すごく綺麗だった。景色が変わる山歩きは楽しい。
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さて、たまには海外文学と行ってみましょう。
昨日の本が、旧約聖書のカインとアベルの話を思い出させたので、昔から大好きな「エデンの東」について語りたくなったのです。ジェームズ・ディーンの有名過ぎる映画で知られているこの作品だけれど、原作は比べ物にならないくらい壮大で素晴らしい。
内容紹介
コネティカットの農家に長男として生まれたアダム・トラスク。暴力を嫌い、
つねに平穏を求める従順な青年に育ったが、厳格な父サイラスの愛を渇望する
腹違いの弟チャールズに虐げられ、辛い日々を送っていた。サイラスは息子の
弱さと兄弟の不仲を案じ、アダムにインディアン討伐の騎兵隊に参加するよう
命令するが…。アメリカ文学を代表する文豪が渾身の筆で描き上げた、父と子
の物語。
※「BOOK」データベースより
ジェームズ・ディーンの映画を見たのが最初で、その時は正直「これが名作?」と思った。ジェームズ・ディーンの寂しげで悪ぶった演技がハマり役の青春映画、程度に思っていた。
数年後、たまたまアメリカのTVドラマ版の「エデンの東」を観て、こんな話だったのか、と心底驚いた。映画になっていたのは、壮大なストーリーのうち、最後の5分の1程度だったことを知った。このTVシリーズが凄く良くて、原作に興味を持って読んだのが高校生の時。
当時は海外文学好きだったので、そのせいもあり、旧約聖書の話は、高校生女子にしてはわりと詳しい方だったので、正確には理解できてはいなかったものの、カイントアベルの話も知っていた。
神が弟アベルばかりを目に掛けることに嫉妬したカインはアベルを殺してしまう(ちなみにこの二人はアダムとイブの息子)。それにより、カインはエデンの東の地に追放される(この小説のタイトルはここに由来する)。つまりカインは人類最初の殺人者であり、これが私達、人類の先祖となる、らしい。ちなみに神様が作ったのはアダムとイブの2人のはず。なのに追放されたカインは東の地でいったい誰と子を成したというのだろう?という疑問はこの際、無視してください。
さて、カインは自分の罪におののき、これを知った人々が自分を殺しにくるに違いない、と神に訴える。これを聞いた神は、カインを殺した者にはその7倍の罰が下るだろう、と言い、人々がカインを殺めることがないよう、カインと分かるように彼に印をつけた。
今思うと、この下りは深いな、と思う。現代でも通用する逸話ではないか、と。例えば犯罪者やその家族に対して、何の関係もない人達が、自分の日常のうっぷん晴らしに嫌がらせ電話をする、みたいなことにも当てはまるように思う。そういった行動は、7倍の罰、つまりより重い罪にあたる、ということを言っているように思う。まあ、嫌がらせ電話と殺人では随分開きがあるので、極端な例えだけどね。
さて、小説「エデンの東」は父親とその息子達の物語である。
優等生の兄アダムばかりを可愛がる父に不満を抱く弟チャールズ。嫉妬心からなのか、元々の性質なのか、このチャールズは兄とは正反対の乱暴者として描かれる。
アダムは悪の化身として描かれる美女、キャシーと結婚し、双子の兄弟アロンとカレブ(これがジェームズ・ディーンが演じた人物となる)をもうけるが、その後すぐに家出し、行方知れずとなる。
実は、この双子はキャシーとチャールズの間に出来た子供である。つまり、「善」であるアダムの血は引いておらず、両親共に「悪」の元に生まれた子供、という設定となる。この善悪をはっきりと分けて考えるところがなんとも西洋文化的だな、と思うけど、まあそれはおいといて。
まるで天使のように穏やかで優しいアロンと、逆に「悪」に惹かれていくカレブ。「善」でありたいと願い、父の愛を渇望するカレブだが、父を喜ばせようとした彼の努力も裏目に出てしまい、父に思いは届かない。腹いせにカレブは娼婦となった母親キャシーの元へアロンを連れていき、自分達の出生の秘密を暴露する。純粋なアロンはショックから軍隊に志願し、戦地で命を落とす。
アロンの戦死のショックで脳卒中を起こし、倒れるアダム。アロンの死について自分を責め続けるカレブは、使用人のリーの勧めで、自分の罪を父に告白し、許しを求める。それを聞いたアダムは、瀕死の状態で息も絶え絶えに、ヘブライ語で「ティムシェル」と呟き、人間には善と悪とを自ら選択する権利、選ぶ責任が与えられていることを伝え、カレブを許す。
この「ティムシェル(timshel)」という語が、この物語の軸となる部分である。旧約聖書で神がカインに言った言葉に含まれるこの語の英訳についての解釈には、「あなたは罪を治めるだろう」と「あなたは罪を治めなければならない」という二通りの説がある。しかし、本当の意味は、「汝、意思あらば、可能ならん」つまり、「罪を治めることができる」という新たな解釈を導きだす。
ここに至るまでの使用人リー(原作ではこの人物が重要な役割を果たす)とアダムのやり取りが素晴らしく、これによって、大団円
要旨のみ語ると、なんてことのない、へたすりゃ「よくある話」に聞こえるかもしれないけれど、それは、これが60年以上前に書かれた話であり、つまり「よくある話」の原点なのだから仕方がない。本当の素晴らしさは、読んでみないことには分からないものなので、まだ読んだことのない方は、長い話ですが、是非読んでみてください。
最近は、読みやすい新訳本も出版されているし、古典の割には読みやすい内容だと思います。
エデンの東
スタインベック
★★★★★
エデンの東(1)
単行本:286ページ
早川書房 (2008/1/24)
¥798
エデンの東(2)
単行本:344ページ
早川書房 (2008/1/24)
¥840
エデンの東(3)
単行本:319ページ
早川書房 (2008/2/22)
¥840
エデンの東(4)
単行本:441ページ
早川書房 (2008/2/22)
¥966
関連サイト
世界文学案内
http://blog.asahipress.com/sekaibungaku/2009/04/vol21-26b0.html
カインとアベル - Wikipedia
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